プリウスの限界を探る、30プリウス前期、走行距離35万km。各部のメンテナンス。
皆様から質問をいただく内容として多いのが『プリウスの耐久性はどのくらいですか?』というものです。中には走行距離が50万kmを超えても元気に走っているプリウスもございますが、それまでの過程がプリウスの寿命を大きく左右します。今回は走行距離35万km走ったプリウスを中古車で購入されたお客様の事例です。
新車から35万kmと、35万kmの車両を買うことの違い。
当店に過去にご来店いただいた走行距離が多いプリウスのお客様の殆どが、新車で購入したプリウスを長く乗り続けた結果走行距離が30万kmを超えたというケースが多く、その場合はそこに到達するまでのメンテナンス記録が分かり、トラブルが起きた場合でも比較的無駄の少ない対処が可能である場合も多いです。
そしてそういった方々は、プリウスにも一定の愛着を持っておられる事も多い為、途中でしっかりと予防整備をおこなっている場合も多いです。長く乗ることに重きを置いておられるため、メンテナンスは必須となっているのです。
今回のお客様の場合はそういったケースではなく、35万km走行している中古車を購入されています。数字で言えば新車から35万km乗ったプリウスと変わらないのですが、どういった経緯で全オーナー様がプリウスを手放したのか、そこが不透明な場合は非常に心配事が増えます。『トラブルが起きたから手放した』という理由が多くなるのも、過走行車の怖いところです。修理費用と車両の価値を天秤にかけた際に、『直す価値が無い』と判断されやすくなる為です。
そんな35万km走行したお客様のプリウスには既にトラブルが発生していました。ドライブシャフトのサイドシールからのATF漏れ、ショックアブソーバのヘタリ、エンジンマウントの劣化、ロアボールジョイントの不具合、そしてエンジンのウォーターポンプの不具合など、走行距離的には仕方がないと言える部分でもありますが、買ったばかりの中古車がこの状態になると少し気分が滅入ります。
今回は過走行車でもあることから、一気にメンテナンスは行わず、優先順位をつけて順番にメンテナンスを行います。
止まれば走行不能になる場合も、エンジンのウォーターポンプ。
プリウスには2つのウォーターポンプが存在します。一つはエンジン側のウォーターポンプ、もう一つはインバータなどのハイブリッドシステムを冷却するためのウォーターポンプです。
今回のお客さまの場合は、止まるべきシチュエーションでもウォーターポンプが止まらない症状で、オーバークール気味になっていました。幸い中古車保証に加入されていた為、こちらは購入された店舗様での修理となりました。しかし、後日再び異常が発生し、点検したところ断線していることが発覚、こちらは当店で修理をさせて頂きました。
写真のような状況で、ウォーターポンプ交換の際に断線したと思われます。過走行車の場合、状況によっては配線が切れやすくなっていたり、トラブルを誘発する要因が新車時よりは多くなります。メンテナンスを行う際も、一定の注意が必要です。
各部からのオイル漏れ。
走行距離が多くなると増えてくるトラブルが『オイル漏れ』です。各部分のシールやパッキンが劣化し、オイルが滲み出てきます。
今回のお客さまの場合は、ドライブシャフトの根本、トランスミッションのサイドシールからのオイル漏れがありました。ドライブシャフトの脱着の必要がある為、ついでにドライブシャフトの交換も行なっております。今回は走行距離が多くなっていることもあり、当店で普段は使用しないリビルトドライブシャフトを使用します。リビルト品は外側のブーツがゴム製ですので、トヨタ純正品と比べて耐久性が悪くなります。過走行車であと何年乗るか分からないといった今回のようなシチュエーションであれば、使用する価値はあると考えております。
他店で解決できなかったエンジン不調。
35万km走行すると、エンジン不調が起きても不思議ではありません。お客さまのプリウスも3番シリンダーに失火(点火不良)の症状がでており、イグニッションコイルの交換やスパークプラグの交換など試されたようですが、一向に解決されなかったようです。
当店でもテスト用のイグニッションコイルなどを用いて点検しましたが、コイルは全く問題なく、次に疑われる吸気系の確認を行ったところ、EGRバルブからインテークマニホールドにかけてカーボンの詰まりが見られ、こちらの清掃を行うことで解決しました。
今回のようなケースは今までは稀でしたが、これから徐々に増えてくることが予測されます。『プリウスはトラブルが少ない』と評判にはなっていますが、メンテナンスをしなければ必ずトラブルが起きるということは忘れずにいたいものです。
必ず壊れないクルマでは無いという事。
結論、プリウスも壊れます。ただ、しっかりと意味のあるメンテナンスを行えば寿命を伸ばすことは可能です。新車時からしっかりとメンテナンスをしていた車両であれば、20万kmは通過点です。今回のお客様のように、既に走行距離を重ねた車両を購入することは、よほど情報がハッキリ分かる車両でなければギャンブルに近い買い物になります。機械なので徹底的に部品交換すれば修復は可能ですが、それではリーズナブルに車両を手に入れた意味も無くなってしまいます。
これからプリウスを購入しようと考えている方に対してこのような事例は貴重では無いかと思います。また、30万km越えの30プリウスが当たり前の存在になる時代が来るとしたら、このブログのような事例もごく普通の内容になるかもしれません。中古車とはいえ、決して安い買い物ではございません。車両がたどってきた過去、現状をしっかりと見極め、中古車選びを行なってください。
最後になりましたが、こちらのお客様には兵庫県からお越しいただきました。初めてのご来店の時から比べ、かなりシャキッとした状態にはなったかと思います。それでもこれからマイナートラブルには遭遇するかと思いますので、ご心配事があればお気軽にご相談ください。この度はご依頼誠にありがとうございました。
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